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東京高等裁判所 昭和58年(ラ)503号 決定

抗告人らは、本件文書の内容について知る法的利益を有して相手方に対しその引渡又は閲覧を求めることができるから、本件文書は民事訴訟法三一二条二号の文書に該当する旨主張する。

本件記録によれば、抗告人らは、本件訴訟において抗告人らが監禁、強要、恐喝未遂等被疑事件について昭和五三年一〇月四日山梨県富士吉田警察署司法警察員の請求により発せられた逮捕状によって逮捕され、次いで同年一〇月六日甲府地方検察庁都留支部検察官の請求により発せられた勾留状によって勾留され、同年一〇月一四日同検察官の請求により勾留期間を同年一〇月二五日まで延長されたところ、抗告人らは同年一〇月二五日釈放され、同年一二月三〇日付で不起訴処分を受けたので、右司法警察員及び検察官の各請求は違法であり、右各請求は公権力の行使に当る公務員がその職務を行うについて故意又は過失によりしたものであるから、相手方及び山梨県は国家賠償法一条により抗告人らに対し抗告人らが被った損害を賠償する義務を負い、また、株式会社朝日新聞社、株式会社読売新聞社、株式会社毎日新聞社、株式会社産業経済新聞社、株式会社山梨日日新聞社は、それぞれ発行した同年一〇月五日付等新聞紙上に右被疑事件について抗告人らが監禁、強要、恐喝未遂の各犯行に及んで逮捕されたかのような印象を与える記事を掲載し、抗告人らの名誉、信用を毀損したが、右記事の掲載は右各新聞社の各被用者がその職務を行うについて故意又は過失によってしたものであるから、右各新聞社は民法七一五条により抗告人らに対し抗告人らが被った損害を賠償し、かつ謝罪広告を掲載する義務を負う旨主張していること、被告である相手方、山梨県、右各新聞社は、その責任等について争っていること、本件文書は検察官が右被疑事件について作成した抗告人らに対する同年一二月三〇日付不起訴裁定書であること、抗告人らは、本件文書をもって右逮捕、勾留及び勾留期間の延長の請求が違法である旨の主張を立証しようとしていることが認められる。

ところで、民事訴訟法三一二条二号にいう「挙証者カ文書ノ所持者ニ対シ其ノ引渡又ハ閲覧ヲ求ムルコトヲ得ルトキ」とは、挙証者がその文書の所持者に対しその文書の引渡又は閲覧を求める実体法上の権利を有する場合をいうものと解すべきところ、不起訴処分は、検察官の行う終局処分中公訴を提起しない処分であるが、検察官が内部関係においてする処分であって、要式行為ではなく、その方式について法律上の定めがなく、既判力を生ぜず、これにより公訴権を消滅させるものではないと解され、検察官は、実務上不起訴処分について不起訴裁定書を作成しているが、右不起訴裁定書は、裁定主文とその理由を明記して事件の結末を明確にし、かつ不起訴処分に伴う検察官の各種処分及び指揮の内容を明らかにするとともに、検察事務の監督等の便に資することを目的とし、専ら検察庁内部の事務処理の便宜上作成される文書にすぎないものであり、法令上その作成が予定されている文書ではないのであって、右のような不起訴裁定書の性質に照らし、抗告人らは相手方に対し本件文書について引渡又は閲覧を求める実体法上の権利を有するものとは解されないから、本件文書は民事訴訟法三一二条二号の文書に該当しないものというべきである。したがって、抗告人らの右主張は採用することができない。

3 同三について

(一) 抗告人らは、本件文書は挙証者である抗告人らの利益のために作成された文書であるから、民事訴訟法三一二条三号前段の文書に該当する旨主張する。

民事訴訟法三一二条三号前段にいう「文書カ挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレタルトキ」とは、その文書により挙証者の地位、権利もしくは権限が直接明らかにされるものを指すものと解すべきであるところ、前述したような本件文書の性質からすれば、本件文書により抗告人らの地位、権利もしくは権限が直接明らかにされるものとは認められないから、本件文書は同号前段の文書に該当しないものというべきである。したがって、抗告人らの右主張は採用することができない。

(二) 抗告人らは、本件文書が挙証者である抗告人らと所持者である相手方との間の法律関係について作成されたものであるから、本件文書は民事訴訟法三一二条三号後段の文書に該当する旨主張する。

民事訴訟法三一二条三号後段にいう「文書カ挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタルトキ」とは、文書の所持者の内部的な自己使用の目的で作成された文書を含まないものと解すべきところ、本件文書は、前述したとおり専ら検察庁内部の事務処理の便宜上作成された文書であるから、同号後段の文書には該当しないものというべきである。したがって、抗告人らの右主張は採用することができない。

(川添 新海 佐藤)

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